こんにちは。予防獣医師の直良です。
今回は、「酸化ストレス」についてのお話です。
おそらくこれから「酸化ストレスと活性酸素」のお話をシリーズ化してリリースしていくことになると思います。
ぼくはこれまで予防獣医師として動物0次診療®の事業を進めてまいりました。
動物(ペット)の生活習慣や生活環境、心身状態などの中に潜む病気の原因をみつけ、予防につなげていく中で一つの大きな病気の原因が見えてきました。
それが
「酸化ストレスと活性酸素」
なのです。
ヒトの健康や予防医学の領域では活性酸素が多くの病気の原因だとされ、
抗酸化などの健康法や治療法がひろまっています。
これはもちろんペットなどの動物にも共通して起こりうることです。
これから、予防医学の観点から「酸化ストレスと活性酸素」について
極力わかりやすくお話します。
病気の多くの原因が活性酸素!酸化ストレス!
でもそれっていったい何?
そんな方はぜひこれからのシリーズをご覧ください。
目次
酸化ストレスと活性酸素
十円玉は錆びますよね。いきものも同じです。

まず、わかりやすくいうと
酸化は錆び(サビ)
だと思ってください。
鉄ってさびますよね?金属の中には放置すると錆びるものがたくさんあります。
身近なところだと、十円玉って新品なコインと古いコインでぜんぜん変わりますよね。あのぴかぴかな平等院鳳凰堂が、まっ茶色になっちゃいます。十円玉は銅でできていますが、とてもさびやすいのです(酸化銅になる)。

金属はこのように酸化して酸化金属になるものが多いですが、それは空気中の酸素と反応するからです。金属が酸素をもらうと、サビます。
だから「酸化=サビ」ることなのです。
これが身体で起きていると考えてください。
動物は呼吸をして酸素を消費しますよね。金属と同様、酸素をもらいます。そうすることで生体も酸化していくのです。
酸素をもらうこと。それが「酸化」です。文字通りですね^^
その逆の反応を「還元」といいます。
酸化:oxidation
還元:reduction
それぞれ英語でこう表記しますが、酸化は”oxidation”。これは覚えるしかないです(笑)一方、還元の英語の元の意味は「削減、低下」という意味です。これは、酸素が削られた、低下したという意味合いで、酸化度が低下したとも言えます。そうやって、酸化したものが元に戻るので「還元」といわれるのです。
活性酸素とは?
さて、酸化ストレスの話に戻りたいところですが、まずは酸化という現象が理解できましたでしょうか?酸素をもらう反応でしたね。
そして、酸化ストレスの話に行こうとするまえにもう一つ、話さなければならないことがあります(笑)
それが「活性酸素」という物質です。
活性酸素はもちろん酸素の一種なのですが、一言でいうと
反応性の高い酸素分子種
ということです。

ます「酸素分子種」という言葉ですが、そもそも酸素は空気中では分子の状態です。O2 と高校化学で習いましたよね?酸素原子二つが結合して、酸素分子ができるのです。酸素分子種と表記していますが、要はそこらへんの酸素のことです。(笑)
そして「反応性の高い」という言葉ですが、簡単にいうと「化学反応のしやすさ」ということです。要は、他の物質に影響を与えやすいかということです。
つまり、他の物質に影響しやすい酸素ということは、、、酸化させやすい存在ということになりますよね。
活性酸素種の種類と反応性

活性酸素「種」という表現ですが、
活性酸素にはいろいろな種類があります。
代表的なのは以下です。
ヒドロキシルラジカル(ラジカル)
一重項酸素
オゾン
過酸化水素
スーパーオキシド(ラジカル)
難しい単語が並びますが大丈夫です。なんとなくで結構です。
ただし、一つだけ覚えてほしいのが、上に行けば行くほど反応性が高いということです。
つまり、ヒドロキシラジカルは最強の活性酸素種ということですね(笑)
活性酸素って体内(細胞内)にどのくらいあるの?

さて、いろんな種類の活性酸素がありましたが、細胞の中にはいったいどれがどのくらい多く含まれているのでしょう?
過酸化水素
スーパーオキシド
ヒドロキシラジカル
上に行けば行くほど細胞内の濃度(量)が大きいです。
凶悪なヒドロキシラジカルはかなり少ないほうです。良かったですね(笑)
もっとも有害な「ヒドロキシラジカル」はどうやってできるか?

それは多くの場合「フェントン反応」という上記の化学反応で発生します。
遷移金属(銅イオンや鉄イオン)などの存在により、スーパーオキシドと過酸化水素からヒドロキシラジカルが生じます。
じゃぁ銅イオンや鉄イオンをなくせばいいとかそういう発想にはなりません。銅や鉄は身体に必要な要素ですから(どちらも血液を作るのに重要)
要は、最も有害なヒドロキシラジカルをおさえるためには、スーパーオキシドや過酸化水素の生成をおさえて、なおかつ遷移金属との関係にも注意する必要があるということです。
酸化をおさえるには抗酸化
ということで、活性酸素種による有害な反応をおさえるにはどうすればいいかということですが、酸化をおさえるという意味で「抗酸化反応」をおこせばいいということになります。
そのために体内には「抗酸化物質」や「抗酸化酵素」がたくさん存在しています。
抗酸化物質
ビタミンC
ビタミンE
ポリフェノール
グルタチオン
抗酸化酵素
スーパーオキシドディスムターゼ(SOD)
グルタチオンペルオキシダーゼ(GPx)
カタラーゼ
などが代表的な物質や酵素です。
これらが反応することで、活性酸素種は消去されたり、酸化の反応がおさえられるのです。
抗酸化物質は最近健康法としてもひろまっています。抗酸化物質を多く含むものを摂取したほうが良いとされており、抗酸化物質は活性酸素を除去する代名詞となっています。
このように、活性酸素は体内で生成され続けているのですが、同時に抗酸化によって消去されているのです。
では、酸化ストレスとは?

お待たせいたしました(笑)
ようやく酸化ストレスの結論です。
これまで、活性酸素についてお話してきました。
活性酸素にはさまざまな種類があり、反応性(有害性)に差がありました。
そして、活性酸素は体内で生成され、抗酸化作用によって消去されるものでした。
「酸化ストレス」とは
生成系と消去系のバランスが崩れた状態
ということです。
つまり、活性酸素が体内でたくさん作られる割には、抗酸化反応が追い付かず、活性酸素種が体内に蓄積されていってしまうことを意味します。
生成系の方が消去系よりも比重が重くなってしまった状態ですね。
こうなると、体内の活性酸素種が身体のさまざまなところで酸化反応を起こしてどんどんサビを発生させてしまうのです。
そうすると金属がサビるように、身体も老朽化し、疲労を起こし、もろくなります。老化や病気につながるのです。
なんとなくおわかりいただけましたか?
次回は
- 活性酸素種が身体の中でどのような障害をもたらすのか?
- 身体の臓器の中でどこが活性酸素が生成されやすいのか?
- どんな状況が酸化ストレスを発生しやすいのか?
という内容でお話していきます。
酸化ストレスの予防につながる話になっていきそうですね^^
ぜひ次回もお楽しみに!

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