こんにちは。予防獣医師のNAOchanです。
今回は「チワワのターゲット予防」ということでお話します。
チワワと暮らす方は非常におおいですが、なんか巷ではチワワは初めての人でも飼いやすいみたいなことを言われているみたいです。
ぼくから言わせてみると割と上級者向けだとは思いますが(笑)
この記事をみていただくことで
- チワワでなりやすい病気がわかる
- それらの疾患の予防方法を理解することができる
- すぐに実践できる方法が分かる
ようになると思います。
四年間動物救急をやってきた予防獣医師の観点から、チワワの予防医学について
なりやすい疾患三つをあげてお話していきます。
目次
チワワで多い疾患の予防医学
チワワは9世紀ごろにメキシコ地方に分布してブリーディングされていた「テチチ」という犬種から品種改変が加えられてできた犬種になります。テチチはもともと宗教的要素も強い犬種だったそうです。
性格は保守的で、興奮しやすい傾向にあります。
僧帽弁閉鎖不全症(心疾患)
僧帽弁というのは左心房と左心室の間の弁です。
左心に関する基本情報として
- 肺で酸素を吸収し二酸化炭素を排出した新鮮な血液が作られる
- 肺の血液が肺静脈を流れて左心房という心臓の部屋に入る
- 左心房から僧帽弁を通過して左心室に入る
- 左心室から心臓の拍動によって全身の血管に新鮮な血液が送りだされる
という流れがあります。
僧帽弁閉鎖不全症は僧帽弁のしまりが悪くなるということなので、心臓の拍動が起きたときに左心室の血液のすべてが全身血管に流れ出ていくだけでなく、左心房に逆流してしまうこともあります。
十分な血液を全身血管に送ることができなかった心臓は、もっと頑張って送り出そうとします。そうすることで、心拍数が上がったり、心拍の力が強まったりして心臓に負担がかかります。そうることで、心臓が大きくなってしまうのです。症状としては
- すぐに疲れやすくなる(散歩時や運動時)、散歩を嫌がる
- 心拍数の増加
- 呼吸数の増加、パンティングが多い(はぁはぁ)
- 咳き込む

心肥大をおこすと気管支が圧迫されるさめ咳が誘発される
僧帽弁閉鎖不全症が進行すると、肺の血液が左心房に流入しづらくなるので、肺の血管で高血圧が生じます。そうなると、本来は酸素と二酸化炭素の交換のためにガスが入るはずである「肺胞」に血管の水分が入り込んで、肺に水が溜まります。これが「心原性肺水腫」といって、おぼれたような状態になります。症状としては
- 呼吸困難
- チアノーゼ(舌が青紫色に変化)
- 失神、意識レベルの急激な低下
心原性肺水腫に罹患すると生死は五分五分なことが多く、一度治療して快方に向かったとしても、生存は長くて2年というのが救急の経験での所感です。
レントゲン画像ではこのように肺に水が溜まって白く映ります。見るだけで苦しそうです。

水がたまることで白く映る「肺水腫」
やはり心臓も大きく映っている。
性別差もデータ上は存在し、オスはメスの1.5倍多いとされています。チワワの男の子は要注意ですね。
僧帽弁閉鎖不全症の予防
予防策としてはたくさんあります。
- 適正体重の保持
- 高塩分食を控える
- 散歩のペース調整
- 激しい運動を繰り返す
- 交感神経過敏
肥満は万病の元です。特に心臓には負担をかけます。
主食または副食(おやつなど)で塩分多めの食事を与えていたとしたら要注意です。チワワをはじめとした小型犬はやはり心疾患になりやすい傾向にあるので、味の濃いめの副食もできるだけ控えましょう。
散歩のペースはきにかけてください。特に高齢のチワワでは。とにかく心拍数が急激に上昇することを習慣化していくと、心臓への負担が徐々に高まっていきます。激しい運動を繰り返すのも要注意です。階段の上り下りなども相当心拍数を乱す原因になります。
交感神経が慢性的に働き続けると、血管が慢性的に収縮傾向になるため、血液を送り出す心臓に負担がかかります。また、心拍数も上がりやすくなるため、落ち着いたリラックス、副交感神経優位を心がけましょう。特にチワワは保守的な性格で興奮しやすいです。
他にも健康予防策はまだまだありますが、僧帽弁閉鎖不全症の記事を作成したときに共有いたします^^
水頭症
水頭症は脳室に脳脊髄液が溜まった状態になることで、多くは先天性(うまれつき)の疾患です。蓄積した脳脊髄液によって脳室がパンパンになり脳圧が上昇します。脳が腫れたようになり、脳の実質が圧迫されるので意識レベルや知能障害、運動障害などが起きます。
- 脳脊髄液の吸収不良(くも膜絨毛での)
- 頭蓋骨の奇形
- 中脳水道の閉塞
などが病態の原因とされています。
症状としては
- 意識・知能・行動・視覚・運動障害
- けいれん発作
などが挙げられます。
外腹側斜視(目が外側や下側を向いている傾向)や泉門の開存などは水頭症に関連する症状のこともあります。
水頭症の予防
先天性のことが多い水頭症は、QOLの向上と悪化の防止、二次障害の防止が重要となります。
悪化の防止としては早期発見(二次予防)が重要となり
- 早期診断、適切治療による長期生存
- 動作、行動による早期発見
- 斜視や泉門開存などに気づき、QOL向上(一次予防)を意識する
二次障害防止として
- 落下物の管理
- 障害物の管理
などに注意をして、水頭症による行動異常からくるケガの防止を実践することが大切となります。
また、脳腫瘍や髄膜炎、脳出血などによる後天的な要因もあります。
- 体温維持
- 血液の清浄化
- ストレスリリーフ
などなど、一般的な腫瘍や脳血流維持のための一次予防法を実践するといいと思います。これらは交感神経過敏も予防できるので、心疾患と一緒に予防できちゃいます。
膝蓋骨内包脱臼(パテラの脱臼)
こちらもチワワでは非常に多い整形学的疾患です。
ひざの皿でおなじみの膝蓋骨が内側または外側に外れてしまう疾患で、チワワの場合は内側に外れやすい傾向にあります。
症状としては
- 後肢の挙上(片足でけんけんする三本歩き)
- ひざの腫れ、痛み
- 運動したがらない
などが挙げらえrます。
膝蓋骨脱臼の予防
命にかかわる疾患ではありませんが、やはりQOL(生活の質)の低下や慢性的な痛みを伴うこともあるので予防するに越したことはありませんね。
原因としては骨の奇形や形状異常からくる「先天性」と外傷や老化摩耗からくる「後天性」がります。
生活習慣によって脱臼が悪化するケースがあります。
- フローリングちゃかちゃか
- 段差の多い生活
- テンション上がったときの後ろ足二本立ち
パテラ脱臼三兄弟っていってるやつですね(笑)
フローリングでは後肢が滑りやすくなり、ひざに大きな負担がかかります。
段差の多い生活も後肢に負担をかけることが多く、階段の全力疾走や玄関やソファを頻繁に上り下りすると慢性的な異常につながりやすくなります。
テンション上がったときに後ろ足だけで立つこともあるとは思いますが、やりすぎ注意ですね。わんちゃんは頭が前についていて、前足に負重がかかりやすいので、後肢に全体重が乗っかるのはあまり得意な状態とは言えません。
そして、なんだかんだで一番重要なのが
- 肥満対策
まぁこれは言わずもがなですよね(笑)
肥満は心疾患やチワワで多い尿路疾患にもつながるので避けましょう。
あと、脱臼は筋肉の脆弱化によるものも考えられますので、
- 安定的かつ定期的な散歩
は大事になります。大腿部と下腿部の筋肉構築は膝蓋骨を安定化させます。不安定な散歩、たとえば過剰な運動を伴う散歩やリードを引っ張って予期せぬ行動をとらざる負えない状態にさせると、後肢に負担をかけることが多いので愛犬にとって安定的な散歩を心がけましょう。
さらに、早期発見して軽症の段階でしたら
- ケージレスト
はとても大事です。散歩や運動の後にはひざを休ませるためにケージなどの中で落ち着かせることも重要です。副交感神経への自律神経調整にも効果的な方法です。運動などで緊張状態になった心身をケージレストによってカーミングして落ち着かせます。
チワワは性格上、ケージで落ち着けないことも多いので、慣れさせる必要があると思います。

チワワの予防医学を実践しよう
今回はチワワのターゲット予防でしたがいかがでしたでしょうか?
各疾患のもっと詳しいことは別記事で各疾患の説明回を作っていきたいと思います。
チワワは他にも
- 気管虚脱
- 尿路結石症
- 乾性角結膜炎
などおこしやすい疾患はまだまだあります。
今後もターゲット予防は配信していきますので、一緒に勉強してまいりましょう!
予防獣医師 NAOchan
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